「・・・ねぇ三蔵。」
「あぁ?」
「突然理由も無く・・・泣いたり、辛くなったりする時って・・・・・・ある?」
今の自分がそうだから、小首を傾げて三蔵に尋ねてみた。
「お前がその状態だ・・・とでも言うつもりか。」
「・・・んー、そうかも。」
三蔵に嘘をつくと余計に心配かけてしまうから・・・
あたしはいつも、三蔵の前では誰よりも素直な女の子になれる。
新聞を読んでいた三蔵がそれを無造作に机の上に置いて、かけていたメガネを袂にしまってからソファーに座っていたあたしの前にやって来ると小さくため息をついた。
「どうせてめぇの事だ。色んな事が目の前にあってどれから手をつけていいか分からなくなってんだろう。」
「・・・わかんない。」
「原因不明か・・・」
大きなため息と同時にあたしの隣に座った三蔵。
・・・呆れられちゃったかな、こんなつまんない事三蔵に言って。
自然と俯きがちになったあたしの頭に三蔵が手を添えたかと思うと、そのままゆっくり自分の肩の上にあたしの頭を乗せた。
「?」
「まず落ち着け。それからやるべき事を紙に書いて、自分なりに優先順位をつけてみろ。期日が決まってるものや急ぐ事もあるだろ?」
「・・・・・・」
「自分だけで考えられないなら・・・俺の所に来い。一緒に考えてやる。」
三蔵が・・・あたしの為にくれた言葉は、他の人が言ってくれた事でもある。
でもなんでだろう。
三蔵の言葉は今までの中で一番・・・するりとあたしの心に沁みこんでいく。
「三蔵。」
「・・・何だ。」
小さな声で名前を呼べば、いつものように不機嫌な声が返ってくる。
でも・・・あたしを見つめるその目は、いつもの何倍も温かくて優しい。
だからついつい甘えてしまいそうになるけど、さすがにそれを口には出せない。
苦笑しながらゆっくり目を閉じると、今まで凍り付いていたあたしの心が溶け出したかのように目から涙が一粒こぼれた。
「・・・今だけだぞ。」
側にいたあたしにだけ聞こえるかのような三蔵の声。
その後には、ギュッとあたしを抱きしめてくれる・・・三蔵の腕があった。
「落ち着くまで・・・側にいてやる。」
意味もなく疲れた時、人が望むモノ
それは言葉だったり、助けてくれる手だったり・・・それぞれだけど
本当に疲れた時に欲しいのは・・・大好きな人の、腕
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